目次
1. 9月FOMCにおける利下げの可能性と背景
2024年9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、利下げがほぼ確実視されています。
8月に行われたジャクソンホール会議でのFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の発言が、9月利下げを示唆するものであったため、市場の反応は急速に進みました。
特に、米ドルは急落し、円高が進行したのがその一例です。
金融市場では、9月に利下げが行われる可能性はすでに100%と織り込まれており、
利下げ幅は0.25%ではなく、0.5%になる可能性を示唆する市場参加者も増加しています。
このような背景から、長らく続いていた金融引き締め政策が転換を迎え、今後の金融緩和政策は米国経済や株式市場に大きな影響を与えるでしょう。
そして、これらの影響は米国だけでなく、日本を含むグローバルな市場にも波及することが予想されます。
特に注目すべきは、金利低下が株式市場に与える影響です。
金利が下がると、企業の資金調達コストが低下し、投資が促進され、結果的に経済成長が期待されることが一般的な理論です。
その一方で、過去の事例を見ると利下げが必ずしも株価上昇に結びつくとは限らない点も留意が必要です。
2. 利下げの理論的影響:株式市場はどう動くか?
利下げは、理論上株式市場にプラスの影響を与えるとされています。
まず、金利が下がることで企業の資金調達コストが低くなり、新規の設備投資や事業拡大が進むことが期待されます。
また、消費者も住宅ローンやクレジットカードの金利が下がることで、消費活動が促進され、経済全体の活性化につながる可能性が高いです。
さらに、株価の算定モデルにおいては、金利は将来の収益を現在価値に割り引く際の「割引率」に該当します。
国債利回りが低下すると割引率が下がり、理論上の株価が高くなるため、利下げが行われれば株価が上昇する傾向があるのです。
しかし、現実は理論通りに進むとは限りません。
過去のデータを振り返ると、利下げ後に株価が上昇するケースは多いものの、必ずしもそうなるわけではありません。
例えば、2007年の利下げ後にはリーマン・ショックが発生し、株式市場は大暴落を経験しました。
また、2001年のITバブル崩壊後も同様に、利下げが行われたにもかかわらず株価は下落しました。
今回も、利下げにより経済がソフトランディングするとの期待が大きいものの、実際にどのような結果になるかは不透明です。
したがって、短期的な市場の動きに対しては慎重な姿勢が求められます。
3. 過去の米国利下げ事例の分析:米国株と日本株の反応
過去のFRBによる利下げ時期を振り返ることで、今後の米国株や日本株の動向を予測する手がかりが得られます。
直近6回の利下げ事例(1989年6月、1995年7月、1998年9月、2001年1月、2007年9月、2019年7月)をもとに、
米国株と日本株がどのように反応したのかを分析してみます。
ダウ工業株30種平均の動き
米国株を代表するダウ平均は、利下げ開始から半年後までの間に以下のような結果を示しています:
- 1989年6月の利下げ後:9.1%上昇
- 1995年7月の利下げ後:11.4%上昇
- 1998年9月の利下げ後:22.7%上昇
- 2001年1月の利下げ後:3.4%下落
- 2007年9月の利下げ後:9.8%下落
- 2019年7月の利下げ後:7.0%上昇
全体的に見ると、過去6回のうち4回は株価が上昇しているものの、2回は下落していることがわかります。
つまり、利下げが必ずしも株高につながるとは限らないことが確認できます。
日経平均株価の動き
日本株も同様に、米国の利下げ後に似た動きを見せる傾向があります。以下は日経平均の利下げ開始後半年間の動向です
- 1989年6月:11.0%上昇
- 1995年7月:34.8%上昇
- 1998年9月:17.9%上昇
- 2001年1月:8.5%下落
- 2007年9月:19.6%下落
- 2019年7月:10.9%上昇
ダウ平均と同様、日経平均も利下げ後は同方向に動く傾向があるようです。
6回中4回が上昇し、2回が下落という結果で、利下げ開始後の日米株価は基本的に同じトレンドに従うことが多いことがわかります。
株価動向の決定要因
過去の事例を基にすると、利下げが株価に与える影響は「利下げそのもの」ではなく、その後の景気動向に左右されることが明らかです。
特に、利下げ開始後半年以内にリセッション(景気後退)に陥った場合、株価は大幅に下落する傾向が見られます。
一方、リセッションが回避され、経済がソフトランディングに成功した場合、株価は上昇することが多いです。
今回の利下げ後も、景気の動向次第で株価が上下する可能性が高いです。
今後のFRBの金融政策や米国の景気動向には注視が必要です。
4. 成長株への期待:不遇な時期からの反発はあるか?
過去数年間、成長株はFRBの利上げによる逆風を受け、不遇な時期を過ごしてきました。
一般的に、成長株は金利低下が追い風となり、金利上昇が逆風となる傾向があります。
これは、成長株が将来の利益成長に依存するため、割引率が高い(=金利が高い)とその価値が低く見積もられてしまうからです。
そのため、FRBの金融引き締め政策が続いた期間中、多くの成長株が低迷しました。
しかし、現在は状況が変わりつつあります。利下げがほぼ確実となり、成長株が再び注目を集めています。
東証グロース市場250指数などの成長株を集めた指数は、特にその動きが顕著です。
この指数は、8月初旬の急落後に大きく反発し、ジャクソンホール会議後にはわずか1日で5%近く急騰しました。
これは、成長株への期待が急速に高まっていることを示しています。
割安な水準にある成長株の魅力
成長株の多くは、利上げ局面で大幅に売り込まれた結果、現在ではかなり割安な水準に達しているものも少なくありません。
このような状況では、金利低下が追い風となることで、投資家が再び成長株に資金を流し込む可能性が高まります。
特に、過去に大きく下落してきた銘柄が、再び反発する兆しを見せることが期待されています。
米国利下げが日本の成長株にも影響
米国の金融政策は日本の株式市場にも強い影響を与えるため、米国の利下げが日本の成長株にもプラスに働く可能性が高いです。
特に、東証グロース市場に上場している多くの成長株は、これまでの利上げ環境で大きく値を下げてきましたが、米国の利下げが追い風となり、反発する可能性があります。
成長株の反発が続くかどうかは、今後の景気動向次第ですが、現在の割安な状況を考慮すると、短期的な上昇の余地は十分にあると考えられます。
5. 米国景気と株価の今後の動向:利下げ後のシナリオ分析
利下げは市場にとって大きな転機となりますが、その後の株価動向は景気の推移に大きく左右されます。
過去の利下げ局面においても、単純に利下げが行われたからといって株価が必ずしも上昇するわけではなく、リセッション(景気後退)の有無が株価に大きな影響を与えてきました。
リセッションのリスクとソフトランディング
過去のデータを見ても、利下げが行われた場合、その後半年以内にリセッションが発生すると株価は下落し、
逆にリセッションを回避し、経済がソフトランディングに向かった場合は株価が上昇する傾向があります。
特に注目されるのは、今回の米国景気がリセッションに陥るか、それとも回避して緩やかな成長を続けるかという点です。
現在の米国経済は、インフレが鈍化しつつあり、失業率もじわりと上昇している状況です。
これにより、FRBは9月のFOMCで利下げを開始する可能性が高まっており、市場もこれを織り込んでいます。
しかし、過去の事例を踏まえると、利下げ後も景気動向には不透明な要素が残っているため、リセッションのリスクを完全に排除することはできません。
株価への影響
株価の動向は、利下げ後の米国経済がどのように推移するかによって大きく変わるでしょう。
仮に、リセッションが回避され、経済がソフトランディングする場合、米国株、日本株ともに上昇する可能性が高いです。
特に、過去のデータでも示されているように、利下げ後100営業日までの米国株の動きは、ITバブル崩壊時を除けば概ね堅調に推移しています。
一方、もしリセッションが発生する場合、米国株と日本株はともに下落することが予想されます。
過去の事例でも、景気後退が発生した場合には、株価が大きく下落しており、今回もその可能性は否定できません。
まとめ:利下げ後の慎重な対応が鍵
今回の利下げ局面では、短期的な株価の動きよりも、景気動向を注視することが重要です。
米国の利下げが景気浮揚につながるのか、リセッションを回避できるのかによって、株式市場の方向性は大きく変わります。
従って、利下げ後の景気指標や企業業績の動向に注目しつつ、慎重に対応することが求められます。
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